国際ワークショップ 「アジアにおける安全保障貿易管理 -地域間協力の枠組みを求めて」結果報告

    開催日 2007年7月28日(土)
    場所 国際文化会館講堂 (〒106-0032 東京都港区六本木5-11-16)
    共催 日本安全保障貿易学会、「科学技術の進展と国際問題」研究プロジェクト(東京大学)
    助成 日本学術振興会、東芝国際交流財団

    近年、日本を含め世界的に、大量破壊兵器に関する機微物質を含む不法な貿易の懸念、特に第三国を経由した場合の貿易管理の問題点が指摘されてきている。このような状況において、アジア地域間で協力しあう枠組み作りを、学術的に俯瞰して整理する必要性が産業界からも求められている。 今回のワークショップでは、「科学技術の進展と国際問題」研究プロジェクトのこれまでの3年間の研究成果を踏まえ、アジア地域における貿易管理の地域枠組みづくりについて国内外の専門家達と活発な議論を行った。

    一般参加者は、広報期間が短く、土曜日の開催であったにも関わらず60名以上の申し込みがあり、当日の会場は満員となった。一般参加者のほとんどが産業界であり、今回の趣旨が妥当であり、必要とされている状況が確認された。

    日本安全保障貿易管理学会会長である山本武彦教授の開会挨拶のあと、第一部「概観」では二人の研究者からの基調講演が行われた。 米国Georgia大学国際安全保障貿易管理センター(CITS)のS.Gahlaut博士からは、米国の立場からみた今後のアジアの貿易管理の枠組み作りについて講演が行われた。また拓殖大学の佐藤丙午教授からは、東南アジアを対象とした日本の核不拡散政策戦略について講演が行われた。

    そしてパネルディスカッションでは、東京大学の鈴木達治郎教授がモデレーター、パネリストとして一橋大学の秋山信将准教授、Vanderbilt大学のM.Chinworth教授が参加し、基調講演へのコメントも含めてこの問題に対する複雑な状況が共有された。秋山准教授は、世界の核不拡散体制における「遵守」(compliance)の問題とそれを実施する体制(enforcement)の重要性を強調し、Chinworth教授は基調講演において指摘された「脅威の認識についての合意」はいまだに完全に共有されていない点を指摘し、国際協力の更なる必要性を訴えた。

    パネルディスカッションの様子
    パネルディスカッションの様子

    第二部「各国の取り組みと現状の課題」では、まず日本の安全保障貿易管理の現状について日本を代表する二社から産業界の取り組みの説明が行われた。三井物産株式会社からは高野順一氏、株式会社日立製作所からは長尾葉介氏が具体的な取り組みについて紹介があった。コメンテーターの東京大学城山英明教授は、特に行政や公共政策の研究の立場から、今後想定される課題などについてコメントがされた。特に、貿易管理と他の公共政策の目標(貿易、経済成長、エネルギー安全保障など)とのトレードオフを、総合的に議論する「メタな政策議論の場」の必要性について触れ、このようなワークショップの重要性を強調した。 引き続き「海外諸国の展望」として、まずは韓国Myongji 大学のKIM Kyoung Soo教授から、韓国の輸出管理システムについてその形成過程から今後の課題までの解説が行われた。また筑波大学の鈴木一人准教授からは、「科学技術の進展と国際問題」研究プロジェクトが昨年行った香港、シンガポール、タイ、マレーシアの現地調査を基にした発表を行い、アジアにおける日本のイニシアチブの必要性等のコメントが行われた。


    第三部では、総合討論として、山本教授の司会のもと、発表者全員によるコメント、および会場からの積極的な意見交換が行われた。特に、会場からの発言では、「定年退職後の専門家の知識管理」、「セキュリティ・クリアランスと労働権」、「研究機関や大学におけるみなし輸出規制」など、実務レベルから幾つかの重要な指摘がなされた。

    閉会挨拶では、東京大学鈴木達治郎教授によって今回のワークショップで明らかになった課題や、この問題に関する今回のワークショップの意義についてまとめがあり、米Georgia大学のS. Gahlaut博士からは、地域枠組みにむけての日米の役割についてコメントがあり、今後の対話の必要性が確認された。

    国際ワークショップの様子
    国際ワークショップの様子

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