2011年度 第1回国際講座開催報告

    講師 嶌 信彦
    ジャーナリスト
    テーマ 「国難から再生へ - 日本の底力は?」
    開催日 2011年6月11日(土)
    場所 城西大学東京紀尾井町キャンパス

    近年、エコノミー、エネルギーおよびエコロジーの3つのEのバランスをどう取って行くかが、世界的な主要課題であり、また先進国と途上国との対立点でもあった。しかし、3.11の東日本大震災以降、世界各国で原子力発電の見直しが起こり、日本人の原発に対する意識も変わりつつある。今後はライフスタイルをどう変えるかという議論にもなっていく。

    今回の東日本大震災は、幕末、敗戦に次ぐ国難とも言える。しかし、また、対応次第ではチャンスに変えて行くこともできると考える。倒幕とそれに次ぐ近代国家創設の時期に、新たな国造りの志を持った志士が次々と擡頭し、様々な思想や主張が入り混った結果、殖産興業・富国強兵というスローガンに収斂して行った。日本をどのような方向に進めて行くかを決めたのは、このような現場の力だった。

    嶌 信彦氏

    太平洋戦争終結後は、戦争に関わった人々、軍人に限らず指導者や官僚、文化人までもが一斉に追放され、財閥は解体された。また、戦火により日本各地が瓦礫の山となり、国土は荒廃していた。この時期も、国の将来を模索する中、首脳が次々と交代したが、次第に戦争放棄、自由主義、教育の充実ということで方向付けられ、その後の高度経済成長に繋がった。いずれの国難の折にも、指導層は頻繁に交代したが、日本は現場の力でそれを克服して来た。

    日本人が長い歴史の中で培って来た、モラルや規律、勤勉さ、安全・安心といった良い特質が、東日本大震災の折に外国のメディア等を通じて一挙に世界に発信され、多くの人々の尊敬を勝ち得た。また、戦後60余年日本が世界各国で徳を積んで来たことが、今回の震災に際し最貧国をも含む世界中の多くの国々から支援が寄せられたことに繋がっている。今後どのような日本を作っていくかを我々が考える時、凛とした精神を持ち、徳と義のある国、居心地の良い国を目指すのは、多くの国民の理解を得易いと思う。

    10年後、20年後の日本の在り方を考える上で、2000年という時を超えて日本が育んで来た美意識、伝統技能・伝統工芸や古くから高い識字率を誇る教育による優れた人材等すべての日本の底力を活かすこと必要である。政治家に依存することなく、国民一人一人がこの課題と向き合い議論を高めて、世論として政治に反映させていくべきである。

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