2011年度 第2回国際講座開催報告

    講師 サイモン・ケイナー博士
    センズベリー日本藝術研究所副所長
    イースト・アングリア大学
    日本学センター所長
    テーマ 「土偶:縄文大使」
    開催日 2011年7月9日(土)
    場所 城西大学東京紀尾井町キャンパス

    明治維新に来日したモースが大森貝塚を発掘した時に見つけた土器の破片に縄目模様が付いていたことから、cord marked potteryと名付けて報告されたものの邦語訳として、「縄文土器」という用語が定着した。

    現在確認されている世界最古の土製人形は、チェコのドルニ・ヴェストニツェ遺跡から発掘されたもので、2万7000年前のものと推定される。この人形は火で焼いた際に破裂するように作られていた。この土製人形は比較的短期間で途絶えたが、その後欧州では、今から約8000年前頃に、農耕の発展や集落の出現と合わせて、土製人形が再び作られるようになった。バルカン半島から東欧にかけて多く出土され、初期農耕民のアイデンティティを示すものだったと考えられる。

    サイモン・ケイナー博士

    日本の最古の土偶は、滋賀県で発掘されたもので、1万3000年前のものである。この土偶は約3cmと、掌に入る大きさである。これまでに縄文時代の遺跡から見つかった土偶の総数は18,000体を超え、大多数は東日本で発掘されている。土偶は発掘された場所や大きさ等で、夫々異なる役割や意味が推測される。即ち、集落の守り神として安置されたもの、個人や集落の祭祀に使われたもの、玩具など。

    一昨年ロンドンの大英博物館で開催された土偶展"The Power of Dogu"は、3カ月間で7万5000人の来場者を集めた。また、Sainsbury美術館においても「掘り出されたフィギュア―日本とバルカン地方の先史の造形」という展示が行なわれた。大英博物館の里帰り展が東京国立博物館で開催された折には、12万人の来場者があった。

    芸術家の岡本太郎は縄文人の芸術的な創造性を評価していたが、最近では漫画家の作品にも影響を与えている。これら土偶や古代の土製人形は、今なお我々を惹きつける力を持っている。大昔の時代を現代に伝えると共に、現代人の古代への興味を喚起するという意味で、時空を超えた大使の役割を果たしているといえる。

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