2012年度 第3回国際講座開催報告

    講師 谷野 作太郎氏
    日中友好協会 前副会長
    元在中国日本国大使・在インド日本国大使
    テーマ 「アジアの巨龍・中国と巨象・インドとどう取り組むか」
    開催日 2012年10月27日(土)
    場所 城西大学東京紀尾井町キャンパス

    今回の講演は尖閣諸島を巡る日中の対立が取り沙汰されている時期と重なったので、興味を覚えた方が多かったせいか満場の聴衆となり、質問も多数寄せられた。

    尖閣諸島の問題で悪化した日中関係に解決の兆しは見えないが、中国の指導者が変わろうとしているこの時点では難しく、中国党大会(11/8-15)終了後の新政権と解決を模索していくことになる。野田首相が国有化に踏み切ったのは、尖閣の安定した管理・運営を目指したものだが、中国政府の受け止め方は違っている。一つは、尖閣諸島は日本政府が地権者から借りて実効支配をして来ているという事実を知らない中国政府幹部も多く、国有化を単なる所有権の移転ではなく中国のものを日本が取ったと感じている。二つ目は、国有化後石原都知事が尖閣諸島のことを話題にしなくなったことから、中国政府は石原都知事-野田首相が密かに打ち合わせて行ったことだと固く信じており、日本に対する抜き難い不信感がある。

    谷野 作太郎氏

    日本は、ロシアや韓国との間にも領土問題を抱えているが、政治と経済は別個に動いている。しかし、中国の場合は尖閣問題が激化した途端に経済活動も文化交流も大きく停滞してしまった。中国とは、政治上の関係が他の総てに及ぶ国である。中国との関係ばかりではなく他の国々との関係を改善するためにも、日本は政治、経済、社会のあらゆる分野で往年の輝きを取り戻すことが必要である。

    改革・解放政策に転換後、中国経済は目覚ましく成長し、今やGDP世界第2位の経済大国となった。貿易量世界第2位(過去10年間で約8倍)、外貨準備高世界第1位、自動車販売台数・生産台数世界一。国連安保理の常任理事国の一員でもあり、アメリカに次ぐ世界第二の軍事大国でもある。しかし、同時に国内の貧富の格差の拡大や少子高齢化などの問題も抱えている。今後、大国中国に求められるものは国際社会との協調であり、そのためには、内需主導の経済への転換、三権分立と遵法精神の確立、歪な愛国主義の抑制等に努力して欲しい。

    一方、インドは独立以来、完全なシビリアン・コントロールの下にある。また、優秀な人材を活かしてソフトウェアの分野で圧倒的な強みを見せている。1990年代に経済自由化政策を取って以来インド経済も急速に伸びている。若年層が沢山いて今後も有望な人材の輩出が期待されるし、外国に出ていた優秀な人々の帰国も増えている。インドの課題は、港湾、鉄道、道路といった大規模なインフラの整備が中国に比べて大きく遅れていることと、カーストの外に置かれている不可触賤民や女性に対する差別をどの様に無くしていくかである。

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