2007年度 第5回国際講座開催報告
講師 | ドナルド・キーン コロンビア大学名誉教授 及び 新潮名誉教授 |
---|---|
テーマ | 「日本文学は世界でどう読まれてきたのか」 |
開催日 | 2007年11月10日(土) |
場所 | 城西大学東京紀尾井町キャンパス |
第5回講義は、コロンビア大学名誉教授のドナルド・キーン氏を講師にお迎えし、「日本文学は世界でどう読まれてきたのか」というテーマで開催されました。
日本の文学が世界に認識されたのは近年になってからのことで、日本文学が浸透しなかった理由の一つとして、日本人は長らく文学を"活字"にしなかったことがあげられるのではないだろうか。日本語についても教材となるべきものがなく、ローマ字で書かれた平家物語をテキストとした例があるが、日本人は中国の儒教を学ぶために中国語を学んだが、鎖国などもあり外国人が日本語を覚える必要性がなかったため、なかなか普及しなかったように思われる。
ケンブリッジ大学で教鞭をとった際、全く日本語を学んだことがない学生へのテキストとして古今集を使ったことがあるが、会話については"平安調"であった。これは例えば、ラテン語・ギリシャ語を学んだ人つまり既に死語になっている言葉を理解はできても話すことができない人にとって、古今集はテキストとして合理的であり、自然な学習方法であったといえよう。
鎖国の際外国人の出入りは長崎出島に限定されていたが、その当時の外国人で日本のことをよく知ろうと研究した代表的な外国人であるシーボルトを含めて3名の例を挙げて具体的に話をされました。その後、外国人による日本文学の歴史本などが出版されたが間違いも多く、日本画や日本美術品に比べて、日本文学の普及率は悪かったが、明治に入り活発化してきたようだ。
日本文学の最高峰の一つとして「源氏物語」があげられるが、代表的な翻訳者のウェイリーら3人のそれぞれの特徴を説明されました。今や日本文学は世界の主要文学の一つであり、アメリカでは一般教養という認識があるといっても過言ではない。素晴らしい日本文学が出版されると、すぐに翻訳され世界に発信されるので、世界はもはや日本文学を無視することはできないでしょう。
日本文学者として高名なキーン先生の講義は、聴講申し込みが非常に多く、満席となった会場は熱気にあふれていました。終了後は活発な質疑応答が行われ、受講者には有益な時間を過ごしていただくことができました。今回も、城西国際大学の安房キャンパスに衛星でサテライト中継が実施され、より多くの方に講義を聴いていただくことができました。


